2022年12月号

2022/12/05

HKT48 11th anniversary LIVE 2022 ~DAY2~で見せた次世代への継承

 2022年11月26日に、HKT48本村碧唯が卒業を発表した。これでHKT48の1期生は(AKB48に移籍した中西智代梨を除き)来年、すべて卒業する。10月には矢吹奈子も卒業を発表している。2022年には多くの1期生、2期生が卒業していき、卒業を控えたメンバーにとっても最後の大きなコンサートとなった。

 そんな状況の中、11月28日、福岡サンパレス ホテル&ホールで行われた11周年ライブ2日目は来年以降を占うようなセットリストが組まれていた。その内容を検証していこう。

 HKT48が作り上げるコンサートは後半部分に盛り上がる曲を大量に集めて「これでもか!」というぐらい楽しさと興奮を作り上げるのが常だ。何回見ても楽しいし盛り上がる。一方で観客の体調によっては楽曲群の「圧」に押しつぶされそうになり、それが逆に単調なものと受け止められしまうこともありえる。見る側にも体力が必要となる。

 とはいえHKT48のコンサートは毎回、何らかのテーマ、隠しテーマがあり、見ていて飽きることはない。

 本村碧唯が卒業発表をした翌々日、それまでとは違った趣向が凝らされていた。テーマは「継承」だ。

継承のプレゼン


 それぞれのジャンルに基づき、先輩1人・後輩1人の組み合わせで次の「継承」を披露した。

 DANCEの継承 : (昼)本村碧唯→竹本くるみ、(夜)本村碧唯→地頭江音々
 SONGの継承 : (昼)秋吉優花→豊永阿紀、(夜)秋吉優花→市村愛里
 ウインクの継承(昼) : 運上弘菜→渡部愛加里
 IDOLの継承(夜) : 運上弘菜→石橋颯
 THEATERの継承 : (昼)今村麻莉愛→井澤美優、(夜)今村麻莉愛→江口心々華
 Yoの継承(昼) : 矢吹奈子→最上奈那華
 0の継承 (夜) : 矢吹奈子→最上奈那華

 各分野に秀でた先輩から後輩へ受け継いでいくという大胆な演出に目を奪われた。継承される側に指名された後輩たちは責任重大ではあるものの、日常の活動が評価されてのもの。ただのひらめきによるものではないことは明白だ。

 THEATERの継承では、下野由貴、上野遥から劇場公演の守り神として引き継いだ形の今村麻莉愛から6期研究生への継承。6期研究生の井澤美優も江口心々華も劇場公演に精力的に出演中だ。納得の人選だった。

最上奈那華という人材


 矢吹奈子と最上奈那華は昼・夜とも「12秒」を歌い、「Yoの継承」から「0の継承」へ。「Yo」というのは「12秒」のイントロの掛け声のこと。夜は「Yo」から「Y」が抜けて「o」の継承へ。MCでは「ゼロ」と言っていたので、ゼロ番=センターという意味とも受け取れる。

 そもそも夜公演は1曲目が「Generation Change」で、センターは最上奈那華だった。そういう意味では世代交代が1曲目から始まろうとしているのだった。続く2曲目の「鏡の中のジャンヌ・ダルク」も旗を持つのは最上奈那華。なかなか勇気のいる演出だ。

 最上奈那華(21)は5月に熊本のコンサートで初お披露目された6期生の最年長研究生だ。6月に発売された「ビーサンはなぜなくなるのか?」の劇場盤では、ソロ曲「悲しみの浄化装置」が収録されている。異例の抜擢だ。本紙では7月号にインタビューを行っている(HKT48研究生・最上奈那華 ソロ曲「悲しみの浄化装置」にかける思い | 48times.com)。1期生の田中菜津美と同じ中学の同級生でもある。

 ステージでの立ち居振る舞いは堂々としていながらも、SHOWROOMではファンの心をつかむ対応をしている。10月の幕張メッセコンサートのクラス替え(組閣発表)では6期生では唯一となった新チームHへの昇格が発表されている(23年2月から新体制)。未来のセンター候補の一人だ。

卒業予定メンバーのセンター曲も


 今回のコンサートでは卒業生ブロックも用意された。めぐり合わせとしか言いようがないが、こういう形で大きなステージでセンター曲を任されたメンバーおよびファンにとっては大切な思い出になったに違いない。

 卒業予定メンバーのセンター曲は以下。

 シンデレラなんていない(宮﨑想乃)
 唇にBe My Baby(外薗葉月)
 会いたくて嫌になる(坂口理子)
 シアターの女神(下野由貴)

 卒業していくメンバーにオリジナル衣装が用意され、見送られていく演出があることに感謝したい気持ちだ。

新体制は2月1日から


 新チーム体制は23年2月1日から始動する。現チームの千秋楽公演と、新チームの公演演目も発表された。

◆現チーム公演千秋楽


 チームH「RESET」公演千秋楽 2023年1月21日(土)
 チームKIV「制服の芽」公演千秋楽 2023年1月28日(土)
 チームTII「恋愛禁止条例」公演千秋楽 2023年1月29日(日)

◆新チーム初日公演


 新チームH「目撃者」公演初日 2023年2月11日(土)
 新チームKIV「ここにだって天使はいる」公演初日 2023年2月18日(土)

 おそらく現チーム体制での大きな会場でのコンサートはこの日が最後。現チームの公演代表曲も披露した。

 時間の経過とともにメンバーが卒業していき、新しいメンバーが加入する。これはどこの世界でもあること。48グループではAKB48、SKE48、NMB48では「最後の1期生」が卒業し、次の展開が始まっている。

 そしてHKT48も本村碧唯が卒業を発表し、いずれ1期生は誰もいなくなる。そんなタイミングでの「継承」をコンサートで見せた意義は大きい。

 「今までのHKT48もいいけど、これからのHKT48もよろしくね」

 そんなメッセージを込められた序盤、継承ブロック、卒業ブロック、現チーム曲、未来につながる選曲など、初期から見ている立場としては感無量だ。

 極めつけは夜の部のダブルアンコールだった。

 通常、全員が出るところだが、スクリーンには「未来へのメッセージ」と書かれ、年号を表す数字がカウントアップしていく。「未来へのメッセージ 2027」と出たところでライトアップ。

 そこで石橋颯(17)がセンターでドラフト3期生、5期生、6期生のいわば「若手選抜」による「ビーサンはなぜなくなるのか?」が披露された。最年長は伊藤優絵瑠(19=ドラフト3期)。10代の選抜だ。結成当時は平均年齢が一番若いグループとしてお披露目されたが、現HKT48には6期生に小学生も加入し、将来への希望に満ちている。

 世代交代への準備が着々と進んでいたことを実感するとともに、そのことが悲しく寂しいものではなかった。卒業するメンバーや、それぞれの世代の想いを持ちつつも、未来へ続く転換点を噛みしめるようなコンサートだった。(岡田隆志)

(写真10枚)

(終わり)
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